分断され危険な世界におけるグローバル倫理の実践
 
2014年3月26・27日
オーストリア、ウィーン
 
 1987年、当時は設立間もないインターアクション・カウンシルがローマで最初の宗教間対話を開催した。その後の宗教間対話では、台頭しつつあった普遍的(グローバル)倫理-世界の全ての主要宗教が共有する道徳的原則-という概念に焦点があてられた。共通の倫理原則に関する議論は、平和で寛容、慈悲深い社会と国際協力を促進するために必要な項目に限定され、その結論は1997年の「人間の責任に関する世界宣言」としてまとめられた。その中核にあるものは「自分にして欲しくないことは他人にもしない」という黄金律だった。
 
 インターアクション・カウンシルは、2014年3月にウィーンで再び宗教間対話を招請した。フランツ・フラニツキー元オーストリア首相が組織委員長を務め、マルコム・フレーザー元オーストラリア首相と福田康夫元日本国首相が会議の共同議長を務めた。その主目的は、危険かつ分断された世界において普遍的倫理規範を効果的にするために直面する挑戦事項を検証することだった。
 
 

  • 1. 普遍的倫理が明確に定義され、理解されていても、各国政府と諸宗教間の異なる関係および多様な文化的・宗教的背景が、普遍的倫理の実施にとって問題を提起している。

 

  • 2. 各国政府にとって、国益、自己利益、倫理的配慮の間に緊張があり、倫理的配慮を無視し、容易で短期的な決定を下す誘惑もある。

 

  • 3. 世界の状況がすべて異なり、それぞれが独特の文脈で発生しているので、普遍的倫理の実施は、複雑である。

 

  • 4. たとえ普遍的倫理の原則が法律で条文化されている場合でも、その実施や法の強制への意思の欠如によって、これらの原則が影響され得る。

 

  • 5. 宗教内および宗教間の宗派的暴力そして世界の多くの宗教と文化に見られる過激派の台頭は、政治指導者と普遍的倫理の実施に対して特別な挑戦を挑まれる。

 

  • 6. 普遍的倫理の実践的応用を持続させ前進させることは、終わりなき任務である。政治指導者には、緊急の目標のために普遍的倫理への誓約を犠牲にするという短期的な誘惑が恒常的にある。長年の前進も、過激派や短期的自己利益への譲歩で急速に崩れ去ることもあり得る。

 

  • 7. 普遍的倫理の前進は、その中心において、全ての人に対する尊敬、寛容、慈愛を伴っている。全ての人間は平等に扱われるべきである。

 

  • 8. グローバル倫理への進歩は、人口の急増によって一層困難になっている。ヘルムート・シュミット氏は、人口が72億から90億に急増しようとしている世界では倫理的目標を達成するのは困難だと訴えた。

 
 
 ウィーンでの議論は公正と平和のための手段として、グローバル倫理の広範な受容を促進するために必要な実用的ステップを強調した。
 
我々は以下のことを勧告する。
 
 
l  グローバル倫理の促進および重要な責任と義務の受容。
l  全ての暴力正当化の拒否及び生命の価値の確認。
l  誤解されやすく分断を促しがちな政策を回避するための慎重な努力。
l  他の人々の見解を理解する特別な努力。相違を乗り越えるためにかかる理解は不可欠。
l  平和への道程としてのグローバル倫理を実施し、文化的・宗教的多様性から協力を促進するための政府指導者たちによる再誓約。
l  過激主義および政府による分断と誹謗の政治の拒否。
l  特定の地域と国家に見られる過激主義に対抗する特別な努力。
l  現代のグローバル化した世界共同体におけるグローバル倫理の促進がより複雑化されていることの認識。
l  全ての人、とりわけ青少年に対して全ての主要宗教およびそれらが重視する共通の倫理基準を教育する特別な努力。
l  人命、環境、天然資源に深刻な影響を及ぼす90億という人口に世界が向かっていることを意識した政策立案。
l  政治指導者と宗教指導者間の宗教間対話の継続。
 
 
 
ウィーン会議参加者リスト
 
2014年3月26-27日
オーストリア、ウィーン
 
組織委員長
フランツ・フラニツキー 元オーストリア首相
 
宗教間対話共同議長
マルコム・フレーザー 元オーストラリア首相
福田康夫 元日本国首相
 
インターアクション・カウンシル(OBサミット)メンバー
1  ジャン・クレティエン 元カナダ首相
2  フランツ・フラニツキー 元オーストリア首相
3  ヘルムート・シュミット 元西ドイツ首相
4  マルコム・フレーザー 元オーストラリア首相
5  福田康夫 元日本国首相
6  アンドリース・ファン・アフト 元オランダ首相
7  シーク・アブドゥルアジィズ・アルクライシ 元サウジアラビア中央銀行総裁
8  トゥン・アブドゥラ・ハジ・アーマッド・バダウィ 元マレーシア首相
9  アブデル・サラム・マジャーリ 元ヨルダン首相
10  オルセグン・オバサンジョ 元ナイジェリア大統領
11  ジョージ・ヴァシリュー 元キプロス大統領
 
元OBサミット・メンバー
12  ヴァレリー・ジスカール・デスタン 元フランス大統領
 
OBサミット事務局長
13  トーマス・アックスウォージー(カナダ)
14  宮崎 勇(日本)
 
宗教指導者
15  ハムザ・アル・サレム博士(Dr. Hamzah Mohammed AlSalem)プリンス・サルタン大学教授(サウジアラビア)
16  張信剛博士(Prof. Hsin-Kang Chang)北京大学名誉教授(中国)
17  フリードリッヒ・ヴィルヘルム・グラフ博士(Prof. Dr. Friedrich Wilhelm Graf)ルードヴィッヒ・マクシミリアン大学教授(ドイツ)
18  ムハンマド・アル・ハバシ博士(Dr. Muhammad Habash)、アブダビ大学教授(シリア)
19  カーク・ハンソン教授(Prof. Kirk Hanson)サンタ・クララ大学教授(米国)
20  ゴラマリ・コシュロー駐国連大使(イラン)
21  マノ・メタナンド・ラオハヴァニッチ博士(Dr. Mano Mettanando Laohavanich)タンマサート大学講師(タイ)
22  アブダル・ムクティ博士(Dr. Abdul Mukti)ムハンマディヤ(インドネシア最古の近代ムスリム組織)本部事務局長(インドネシア)
  ナイフォン・フィリッポポリス副大主教(Metropolitan Niphon)、モスクワ・アンティオック総主教代表(レバノン)
24  大谷光真浄土真宗本願寺派前門主(日本)
25  ラビ・ジェレミー・ローゼン博士(Rabb iDr. Jeremy Rosen)、元カーメル・カレッジ学長、ラビ(英国)
26  アミン・サイカル博士(Prof. Amin Saikal)オーストラリア国立大学教授(オーストラリア)
27  シュテファン・シェレンソグ博士(Dr. Stephan Schlensog)グローバル倫理財団理事長(ドイツ)
28  ラヴィ・シャンカール師(Sri Sri Ravi Shankar)アート・オブ・リビング(インド)
29  アリフ・ザムハリ博士(Dr. Arif Zamhari)ナードラトゥール・ウラマー(世界最大のムスリム組織)指導者(インドネシア)
30  ポール・M・チューレナー博士(Dr. Paul M. Zulehner)ウィーン精神神学議長、神父(オーストリア)
 
オブザーバー
31  クローディア・バンディオン―オートナー(Claudia Bandion-Ortner)アブドラ国王宗教・文化間対話国際センター(KAICIID)事務次長(オーストリア)
32  ファイザル・A・ムアマール(Mr. Faisal A. Bin Muaammar)KAICIID理事長(サウジアラビア)
33  杉浦正健元日本国法務大臣(日本)
 


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